森林社会学

東大農学部で「森林社会学」の集中講義を担当することになって、この週末の二日間を1号館の6番で過ごしました。台湾の阿里山の話もしましたが、この東大農学部正門には、もともと、明治神宮の鳥居と同じように、タイワンヒノキが使われていました。院生時代の2003年に木曽ヒノキに取り替えられたことはよく憶えていて、弥生講堂の裏に古い門がしばらく置かれていました。

さて、集中講義「森林社会学」の方は、予定した内容が7コマに収まらなかっただけでなく、最後の方は疲れも出て、話がグダグダにになってしまいました。ただ、今回、三井昭二先生の書かれた『森林社会学への道』や、内山節編(1989)『《森林社会学》宣言』を改めて手にとって、「森林社会学」とは何かを考えることができました。

『《森林社会学》宣言』の「はしがき」には次のように書かれています。森林社会学とは、「自然的=社会的存在としての森林を、ときに社会史的視点から、ときに地域社会の視点から、ときに自然史的視点から、ときに森林と人間の関係史的視点からとらえていくことによって、いわば森林と人間の社会との関係論を組み立て直そうという試み」であると。これは環境史の考え方にとても近く、先見の明に驚かされます。なぜ歴史に注目しているのかについては以下のように述べられています。

「森林の歴史は人間の歴史でもあったのではなかったか。人間と森林のかかわりかたが森林の形態を変え、現代における森林の状況は、現代における私たちの文明の状況を指し示している。とすれば、森林と人間たちの社会の関係を、その根源にまで遡ってみつめなおしていかなければ、森林と人間の共生を語ることはできないだろう」

この部分は共感するところもありますが、十分に理解できないところもあります。ただ、「森林社会学」(「森林社会史」と言い換えたほうが良いかもしれませんが)は、これまで自分が取り組んできたことにかなり近いと言えそうです。というよりは、若いときに読んだこの本からの影響が小さくなかったのかもしれません。

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