第19回環境史研究会ワークショップ(7/23)詳報

先日お知らせしたワークショップの詳報です。
多くの方のご参集をお待ちしております。


【日 時】 2016年7月23日(日)13時~17時

【場 所】 東京大学農学部1号館3階 農経会議室

【懇親会】 17時半ごろから東大農学部近辺にて

【題目と報告者】

「寒冷地稲作の拡大要因に関する農業気象的考察-20世紀後半・中国黒竜江省の事例」
福原弘太郎(東京大学大学院農学生命科学研究科)
中国東北部の黒竜江省では1980年代以降,水稲生産の拡大が続いている。農業経済や歴史学の先行研究では,この拡大の契機を日本から導入された畑育苗技術を中心とする一連の農業技術に求めているが,その寄与度についての定量的な検討はなされていない。他方,気象学分野では,20世紀後半以降顕在化している温暖化傾向が水稲の生育に有利に働いたとする研究が存在するが,技術の変遷についての検討が乏しい。本発表では,黒竜江省における水稲収量(単収)増大について,農業気象的アプローチによって要因解析を行うことを試みる。すなわち,栽培技術や品種の導入・普及を,温度や日射などの気候資源の利用可能量を増加させるプロセスとみなしたうえで,上述の技術・気象変化などの諸要因が寒冷地である同省の水稲収量増大にどの程度寄与したのか,可能な範囲で定量化を行いつつ,全体像を描き出すことを目指す。


「近現代中国東北地域の自然環境」
永井リサ(九州大学総合研究博物館)
中国東北部は中東鉄道(東清鉄道)を境に、西側は草原、東側は森林地域にほぼ分かれるが、明代から農耕に適した遼河流域を中心に農業開発が行われていた。清代の中国東北部では、遼河流域では農業が行われ、東部では皇室や八旗狩猟場である圍場、朝鮮人参採取場である参山、西部では皇室用牧場である官牧廠(官営牧場)が設定され、漢民族の流入による農業開発に一定の歯止めの役割を果たしていた。清末に入りこれらの制度が形骸化すると、清朝はこれら皇産を丈放(民間払い下げ)するようになり、中国東北部の農業開発が全面的に進むことになった。本発表ではこの明代から戦前までの中国東北部における農業開発過程について、森林、草原地域の減少という面も合わせて報告してみたい。

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