カラマツと柴犬のふるさとへ
東大林政の院生Kくんに誘われて東大林政S先生と研究室院生Uさんと一緒に長野県の川上村に調査に出かけました。
「余が郷、落葉松の産地を以て名あり」。明治32年に『落葉松栽培法』を著した実業家の井出喜重は、そのころすでにカラマツの種子の産地として有名であった川上村の人でした。この本は種子販売をするにあたって口頭で伝えていた栽培法を出版したものです。川上村文化センターの2階には村の歴史が展示されていて、そこに井出の『種子販売人名録』があり、誰に販売したのかが一目瞭然です。北海道や内地だけでなく朝鮮や樺太へも販売されています。
明治22年に8村(居倉村、原村、御所平村、大深山村、秋山村、梓山村、川端下村、大明村樋沢組)が合併して誕生した川上村はその後に合併することなく現在まで続いている自治体です。8つの前村の入会林野は大正13年にいったん川上村に統一されるのですが、昭和9年の「追加協定書」によって、1/3を川上村に統一する一方で、2/3を8つの「林野保護組合」に残し、さらにそのうち5割まではいつでも各組合員に無償譲渡できることになりました。林業総合センターにはそうした経緯を含めた林野の変遷が壁一面の展示で説明してあり、なかなか読み応えがありました。
ゆるキャラのレタ助はそこらじゅうにいましたが、もう一つの目的である川上犬には展示舎改修のため残念ながら会えませんでした。川上犬は信州柴犬とも言われる小型日本犬で、県の天然記念物として保護されていますが、現在、頭数が減少しています。それでも、今回、天然記念物指定に至る経緯を正確に知ることができました。川上村は実はおそばでも有名です。高齢のご夫婦だけで切り盛りしている善慶庵にお昼にお邪魔しました。標高1000mの寒冷地に育つソバの実で打ったおそばはとても甘く美味しかったです。サービスでレタスサラダも出してくれました。いまはカラマツではなくレタスで名を馳せる川上村です。帰り際にふと窓の上を見たら、以前、飼育されていたと思しき川上犬の写真が飾られていました。
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